衒学始終相談 1巻 「私」ちゃんのエッチな感情
「私」ちゃんが出した結晶の形は
アルファベットの「H」。
つまり「私」ちゃんは
「先生」に対して
エッチな感情を持っている
という事ですね。
漫画感想レビュー第5回は
『衒学始終相談』1巻です。
作者は三島芳治さま。
ネタバレを含みます。
衒学始終相談のあらすじ
特に研究テーマも持たずモラトリアムな
学究意欲だけを持て余していた
或る国立大学の1年生の「私」は
大学で研究をしている「先生」を手伝う事になる。
いつか「先生」の研究成果を
横取りして地位を奪おうと考えている「私」。
衒学始終相談 1巻 感想レビュー
「先生」を追い落としてポストに納まろうとする「私」ちゃん
「私」ちゃんは或る国立大学の1年生。
特に研究テーマも持たずモラトリアムな
学究意欲だけを持て余しています。
社会に出て働くというイメージも持てないし
卒業後は何かの研究でもして暮らしたいと
思った「私」ちゃんは
「先生」の研究を手伝う事になりました。
『衒学始終相談』 1巻表紙の右が「先生」で
左が「私」ちゃん。
教員と繋がりを作っておくのは
良い事だろうと思ったからです。
「先生」に頼まれて机の上に並べたリストの資料。
- ジェット飛行機の開発史
- 1950年代の外国の新聞の模写
- キリスト教建築の図版
- 海洋生物事典
並んでいる資料に
どのような一貫したテーマがあるのか
全く分からない
「私」ちゃん。
「先生」は何を研究しているのか
よくわからないけれど
にもかかわらず大学から巨額の研究費が
下りているらしかった。
「私」ちゃんは
あわよくば自分もこれになりたいと思いました。
とにかく「先生」にくっついて
学内に居場所を確保し
ゆくゆくは「先生」を追い落として
このポストに納まろうと考えます。
魔女のイメージの探求
「先生」が今やっている研究は
魔女のイメージの探求。
目下人類の喫緊の課題は心の復興。
気候変動
疫病の蔓延
白熊の減少
減りつづける書店。
こんにちの世界は
終末的な状況に覆われ
人の心は傷つき
壊れている。
それを修復する研究を
しているのが「先生」です。
現在の窮状を打開するのに
魔女などの力に頼るのは
今の世界が直面している問題は全て
近代合理主義の行きづまりだからです。
その解決策を
近代以前の力に求めるのが
最近のトレンドであり
「先生」の方針とも一致します。
「先生」は壁に魔女に関する写真を
ピンで留めて行きます。
雲の中にも
聖堂のモザイク模様にも
海洋の地形にも
広告の中にも魔女の意匠が隠されていると言う「先生」。
壁に貼り付けた写真の中に
「私」ちゃんの小さい時の写真がありました。
「私」ちゃんも魔女だったようです。
しかし「私」ちゃんの小さい時の写真は
「先生」の私的な資料でした。
ちょっと
とぼけていて
「先生」が何を考えているのか
まだ分からない感じですね。
「先生」にバレてしまった「私」ちゃんの企み
数日前外国の化学工場が事故をおこし
そこから流出する
大量の有害物質をどうするかが
国際的な問題となっています。
「先生」はその事故の対策を考えていました。
そして「私」ちゃんは
「先生」のポストを狙っています。
「私」ちゃんには「先生」が
毎日気楽そうに
暮らしているように
見えるようです。
今はいい顔をしておいて
いつか研究成果を
横取りして
地位を奪おうと考えている「私」ちゃん。
「先生」が考える事故の処理は希釈です。
大気中に有害物質を放出して
毒素を世界中に散らします。
呆れた顔の「私」ちゃん。
無限に広めて
薄めてしまえば
毒も別の物に変わってしまうと
「先生」は言います。
「先生」の研究は
それを起こす事であり
すでに臨床試験用の試薬は
完成していました。
「私」ちゃんの飲んだコーヒーの中に
既に希釈促進約が入っていました。
「先生」は「私」ちゃんが考えるより
おそろしい女だったようです。
「私」ちゃんの身体の毒になる様な悩みとか
他人に対する良くない企み
「私」ちゃんの中から何か消えた物があるはずですが
「私」ちゃんには分かりません。
「私」ちゃんの企みは希釈されて
世界中の心で共有されてしまいました。
「先生」に「私」ちゃんの企みが
バレてしまったようです。
いつか「先生」の
研究成果を横取りして
地位を奪おうという
企みが。
「先生」の含み笑いが素敵です。
意外と多才な「私」ちゃん
横須賀の軍港に
アメリカ軍の新型艦が停泊しているというので
「先生」と「私」ちゃんは
偵察に向かいました。
二人で車に乗ってまるでドライブですね。
仲良しの女の子二人組が
遊びに来ている体で
警備を抜けて
軍港に入る事に成功しました。
水着になった「先生」と「私」ちゃん。
警備の手薄な海中から
軍の施設に潜入します。
軍の施設に上陸した
「先生」と「私」ちゃんが見たのは
軍艦より大きい
巨大なウニでした。
米国は昔から様々な分野で
海の生き物を利用していました。
海洋物の意識は
人類の心の復興の鍵であると目されています。
シンプルで異質で言葉を用いない心。
それを見つめる事は
私たちの心を相対化してくれる。
だから心の危機を迎えた時
我々はもの言わぬ
海の生き物に
救いを求めるのだと「先生」は言います。
最近SNSで魚介類のイラストが増えているのは
米軍が精神薬を作るのと同じで
魚の絵を描いて
心を和ませているのです。
「私」ちゃんも魚系のイラストを
ずいぶん描いちゃっていました。
恋愛小説を書いたりイラストを描いたり
意外と多才な「私」ちゃん。
「先生」は妹を欲しいと思ったことはありませんでした
某国から軍事飛行機の姉妹機の設計を
依頼された「先生」。
「先生」は妹方面には暗いので
「私」ちゃんに妹の概念を訊きます。
「私」ちゃんは一人っ子ですが。
「先生」はその方が純粋な妹の観念を作れると言います。
頭の中にある通俗的な
妹のイメージを「先生」に話す「私」ちゃん。
「私」ちゃんは
どちらかと言うと姉が欲しかったようです。
「先生」は
「私」ちゃんの
期待に応えられる様に
努力しようと言ってくれました。
しかし「先生」は妹を欲しいと
思ったことはありませんでした。
「私」ちゃんのエッチな感情
惚れ薬を作ったと言う「先生」。
「先生」はいつものように
「私」ちゃんの飲んだコーヒーに
あらかじめ試作品を
混入しておきました。
惚れ薬を飲んでしまった「私」ちゃん。
安易なハプニングで
助手が暴走する事例が
多いという理由で
椅子に拘束されてしまいました。
30分経って「私」ちゃんに
惚れ薬の効果が出ました。
停止液を投入されて
高められた感情が
急激に冷却されて
賢者の時間になった「私」ちゃん。
高められた感情が急激に
冷却された事で
「私」ちゃんの心の形が
手の平サイズに結晶化しました。
人間から心を分離する実験だったようです。
「私」ちゃんが出した結晶の形は
アルファベットの「H」。
つまり「私」ちゃんは
「先生」に対して
エッチな感情を持っている
という事ですね。
可愛らしい絵柄で結構毒がある
『衒学始終相談』 1巻。
主人公の「私」ちゃんが
「先生」の研究を奪って
そのポストに納まろうとする
腹黒さが良いです。
「私」ちゃんの企みは
2話で早々に「先生」にバレてしまいましたが。
それでも「先生」は
「私」ちゃんを傍に置き続けます。
最初は「先生」を舐めていた
「私」ちゃんですが
ちょっとずつ「先生」の
底の知れなさが分かって来ます。
「私」ちゃんは果たして
「先生」のポストを奪う事が出来るのでしょうか?
ちょっと格が違い過ぎる気がしますが。
「私」ちゃんが
自分を「可愛い」と言ったり
「若いので」と言ったり
良い性格をしていて面白いです。
弦楽器で演奏しそうなタイトルですが
音楽とは関係ありませんでした
衒学始終相談 1巻 試し読み
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